伊集院光は深夜放送を続けるのか。( &『おすすめラジオ番組ベスト10』2020年7月版)

伊集院光(以下、敬称略)の番組に久米宏がゲスト出演した。
(2020年6月25日放送 TBSラジオ『伊集院光とらじおと』)

その2日後、役割を逆にした番組があった。
(6月27日放送 TBSラジオ『ラジオなんですけど』最終回)

同じ組み合わせにもかかわらず、伊集院がホスト、久米がゲストの番組のほうがメチャメチャ面白かった。

ゲストがどんな球を投げても受け切り、捕りやすい球を胸元に返してあげられる伊集院という人は、インタビュアーとしても一流だなとあらためて思った。

以下、チラシの裏的感想。

「深夜放送を52歳の自分がやり続けていいものだろうか」と吐露した伊集院。

もう足かけ30年以上、深夜放送を続けてきた人だけに、常人には計り知れぬ思いがあるのだろう。

30年の間に深夜放送のあり方も位置づけも変わった。

ラジコのタイムフリーのおかげで、いつでもどこの番組も聞くことができるようになった。

そのせいもあって、以前ならスルーされていた問題発言がたびたび炎上している。

スルーされていた、というよりはほとんどの人が気づかなかった、と言ったほうが近いか。

伊集院が深夜放送にこだわるのは、本音をしゃべれる場だから、というのもあるかも知れない。

この想像が当たっているとして、果たして本当に今は本音がしゃべれない時代なのだろうか?

爆笑問題の太田光は、少なくともラジオでは、本音をしゃべりまくっているように見える。

先日もゲストのイルカに対し、「『なごり雪』が当たったもんだから、調子に乗って『海岸通り』まで出して」云々と本人に向かって言っていた。
(両方とも伊勢正三のオリジナル曲)

またサザン・オールスターズの桑田佳祐についても、「むかしはさだまさしやイルカのようなフォークをディスっていなかったか。オレはその思想に感化されたのに、今ごろになって『なごり雪』を歌うなよ」と。

ニュアンスは違うかも知れないが、そのようなことを言っていた。

この程度の発言はポンポン出てくる。
それでも問題になることはない。

なぜかと考えるに、メディアも聴取者も太田光のコメントに価値があると感じているからだろう。

たぶん太田光の好感度はそれほど高くないはずだが「この人のコメントは聞き続けたい」と思う人は少なくない。

レギュラーをたくさん持っているのがその証左だ。

ほかに毒舌でならしている人と言えば、講釈師の神田伯山が思い浮かぶ。

この人は真打ちになるかなり前から、とある横綱(国民的人気を博したあの人)が金で星を買っていたことをネタにしていた。

現在、TBSラジオで放送中の「問わず語りの神田伯山」でも毒舌、悪口全開である。
(これからは少し控えるようなことを言っていたが)

太田光、伊集院光、神田伯山に共通するものは何か。

腹をくくっているか、否か。

これに尽きるのではないか。

炎上狙いのアルファブロガーやツイッター有名人も「この人に関わったらややこしいことになる」と思われているから、誰も近づこうとはしない。

是非はともかく、ハラが定まっている人は強いと言える。

最近、ナインティナインの岡村隆史の発言が炎上した。
発言はもちろん冗談なのだが、世間が許さなかった。

「コロナ騒動が終われば、経済的に苦しくなった女性が風俗に流れますから、女性のレベルが一時的に上がります。そうなるのを待ちましょう」

このような趣旨だったと思う。

もしこれを太田光が言っていたらどうなっていたか。

まったく問題にならなかった、と私は思う。

またいつもの冗談か、で済まされていたのではないか。

もちろんそこには田中の突っ込みがあるから、当時一人でやっていた岡村とは同条件ではないが。

何が言いたいかというと、世間は発言内容に対して怒っていたのではなく、近年の岡村の性根にむかついていたということ。

たまりに溜まっていたものが、ここぞとばかりに噴出したのがあの舌禍事件だったと思う。

「パンがなければケーキを食べれば言いじゃない」と言ったといわれているマリー・アントワネットや、「生類憐れみの令」を出した徳川綱吉のように、居心地の良いお城からほとんど出ないまま数十年が過ぎ、昔のノリで面白発言をしたつもりが世間から総スカンを食らってしまった。
本人がいちばんビックリしたのではないか。

おそらく岡村はなぜあれだけ炎上したのか、いまだに腹の底では理解していないと思う。

だから今後の対処の方法として、風俗ネタはやめとこうとか、その程度にしか考えていいないかも知れない。

あの事件のあと、矢部浩之が「オールナイトニッポン」に復帰した。
(ひさしぶりのコンビによる『わーわー言うとります』『お時間です』に思わず涙した人も多かったのではないか)

新しくできた矢部のトークのコーナーでは、家族の近況が語られるのだが、岡村の興味のなさ加減が半端ない。

死んだ目をして座っているのが目に浮かぶようだ。
いや、悪いと言いたいのではなく、本当に結婚とか、家族とか、興味ないんだろうなと。

深夜放送はこの数十年の間に無法地帯ではなくなっていたことを知らなかったのが、岡村さんの落ち度というか呑気さだった。らしいと言えば言える。

本音をしゃべれるか否かは本人次第で、時間帯は関係ない、というのが私の考え。

伊集院が腹をくくったままなら、いつでもどこでも本音は言えるし、炎上はしないと思う。
テレビは知らんが、少なくともラジオでは。

炎上したとしても、伊集院を援護する人が至るところで立ち上がると予測する。

だから「本音をしゃべれる」云々で深夜放送にこだわることはない。

それにもし伊集院が深夜放送から卒業しても、今は SNS がある。

活躍の場はいつでも用意されている。
そこではスポンサーや局に気兼ねをする必要がない。

その SNS での感想だが、久米の番組内で、ハガキに較べて「軽い」と伊集院が言っていた。

ハガキにこめられた聴取者の思いは重いと。
たしかにそうかも知れない。

しかし SNS の中の人である私の立場から言わせてもらうと、今の時代のほうが聴取者の本音が見えやすい。

ハガキの時代には、感想を書いて出したとしても、本人に読んでもらえたかどうかがまず分からない。
もしかしたら番組のスタッフが握りつぶすかも知れない。

SNS は、本人に届かなくても、少なくとも意見は言える。誰かの目に触れる。

SNS がなかった頃、新聞などは投書欄に、自社に都合の良い投書しか載せない、ということができた。

マスコミが印象操作できた時代は終わった。
SNS いいじゃないですか。

むかしのほうがフィルターがかかっていて、世間の本音が霧にかすんでいた。

それと伊集院は、SNS での批判を、ハガキによる批判と同等に重く受け止めるのは負担になりすぎると言うようなことを言っていた。

仰るとおり。SNS の批判はハガキの100分の1くらいに考えていればいいのではないか。

どんなに素晴らしい本や映画でも、1000の「いいね」がついて、「よくないね」が0なんてことはあり得ない。

もしあったとしたら、「なにか操作されている」と多くの人は感じることだろう。

1割くらい「よくないね」がつくくらいがむしろ正常なのだ。

高齢者がよく陥る「昔は良かった」「新しいものはとにかく否定」病に、まさか伊集院がかかっているとは思えないが‥‥ SNS を率先して取り入れ、さらに面白いコンテンツを提供してほしいものだ。

伊集院と久米との対談で、両者の違いが如実に出たのが、スポンサーに対する考え方だった。

久米の社会人としてのスタートは TBS 社員から。いわば超エリートサラリーマンだ。
その中にあって、あっという間に頭角を現わし、全国にその名をとどろかせ続けた。

伊集院の芸能活動スタートは落語家から。
いうまでもなく噺家の役割の一つに、権力を揶揄してみせ、大衆の溜飲を下げるというのがある。

15歳の伊集院がそこまで意識的に考えたか分からないが、久米とは対極の位置からの社会人スタートだった、と言えなくもない。

二人のスポンサーに対する意識の違いが興味深かった。

久米は対談の中で「電通バンザイ」的な発言をしていた。
まあこれは流れの中で伊集院の発言を受けただけなので、この言葉だけ切り取らないでいただきたい。

(それよりも私が気になった発言は、「クソ金メダル」と「スポンサーに金を払っているのは視聴者」。長くなるし、引退した人の発言なので、今回はスルー。)

久米はTBSの社員から、その後フリーになり、テレビ朝日「ニュースステーション」のメインキャスターを長年にわたって務めた。
この革命的報道番組は、電通の力なくしてあり得なかったそうなので、久米が電通を奉るのはうなずける。

それに対し伊集院は、一貫して「スポンサーに魂を売り渡さない」ことを信条にしてきたように思う。

義理と人情の人、伊集院は、信条を十分理解してくれている TBS のスタッフのことを慮るゆえに、深夜放送をやめることはできないと考えているかも知れない。

余談だが、伊集院が TBS で番組を始めるとき「(禁煙のスタジオで)タバコを吸わせてくれるなら」という条件を出し、スタッフがそれを飲んだそうだ。
この話は「深夜の馬鹿力」の放送の中で本人が語っていた。

伊集院という人は、テレビのメインキャスターとしても、超一流になる人だと私は思っている‥‥が、ラジオにこだわり続けるのも有りかも知れない。

ラジオは今や radiko タイムフリーのおかげで、全国至るところで放送された何千という番組を、すぐに頭出しして聴くことができる。一週間以内という条件付だが。

やろうと思えば ストリーミングで映像もライブ配信できる。

将来性としてはテレビよりも明るいのではないだろうか。

スポンサーの顔色をうかがってばかりいるテレビ界に、わざわざ自分から飛び込み、言いたいことをガマンして、言いたくないことを言わされることもないだろう。

伊集院が今後、どの方向に舵を取ろうと、しっかりとハラを定めてのものであるなら、応援していきたい。

太田光、神田伯山しかり。

ちなみに伊集院ファンの私でも、ラジオショッピングのコーナーは飛ばしている。

(東京住みではないので、交通情報も天気予報も飛ばしている)

これは爆笑問題の番組でも同じ。
さすがの伊集院と太田も、まさかこれらのコーナーで牙をむき出すことはない。

最後に、おすすめのお笑い番組を10個上げときます。

よろしかったらラジコでおためしを。
(アタマの5分くらい聴いて笑えなかったら、縁がなかったと割り切ってどんどん次へ進む、というのがオススメの聴き方です)

おすすめラジオ番組

ニッポン放送 高田文夫のラジオビバリー昼ズ
(月~金 11時30分 ※高田先生回は月と金のみ)

TBSラジオ 伊集院光とらじおと
(月~木 8時30分)

TBSジャンク 伊集院光の深夜の馬鹿力
(月 深夜1時)

TBSジャンク 爆笑問題カーボーイ
(火 深夜1時)

TBSラジオ ハライチのターン!
(木 深夜0時)

ニッポン放送 ナインティナインのオールナイトニッポン
(木 深夜1時)

TBSラジオ 問わず語りの神田伯山
(金曜 21時30分)

文化放送 伊東四朗 吉田照美 親父・熱愛
(土 15時)

ニッポン放送 オードリーのオールナイトニッポン
(土 深夜1時)

TBSラジオ 爆笑問題の日曜サンデー
(日 13時)

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